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住宅用免震装置の市場現況と今後の予測

 
平成16年2月5日

背景

 免震装置については、これまで大型建築物や公共建築に稀に見られるようなシステムとして一般的には認識されてきた。しかし、1995年1月に発生した阪神淡路大震災を契機に、これまでの主流である建物の耐震構造から一挙に免震構造を取り入れる動きが目立ちはじめた。
 住宅としての免震構造(工法)を早くから取り入れたのは、静岡に本社を置き、東海大地震におびえるユーザーの深層心理を捉えていた木造住宅中堅ビルダーの一条工務店と、強さを売り物にしている2×4住宅のNo1企業である三井ホームであった。この2社の免震工法への取り組み姿勢としては、明らかに一条工務店の意気込みが上回っていて、実大の免震工法体験会などを頻繁に繰り返しながら粘り強く営業販売していった。これに対して、三井ホームを始めとする多くの住宅会社は、阪神大震災や宮城沖地震などの直後に、それぞれが自社住宅の構造優位性(主に耐震構造中心)を訴求するに留まっていたが、2002年ころまでに一条工務店の免震装置を設置した住宅建設が500棟を超えるという実態を見て(一条工務店は2004年末で1,000棟の契約実績と発表)、他の住宅会社も開発スピードを上げ始めるようになってきた。
 一条工務店が、免震装置のついた住宅としては第1号となる建築基準法に則した一般大臣認定(型式適合認定)を取得した半年後には、大和ハウスが、違うシステムで第2号となる一般認定を取っている。その後、大和ハウスと同じシステムを用いて積水化学(ハイム)やスウェーデンハウスなどが販売に踏み切った。又、自他ともに住宅建設No1を誇る積水ハウスも、大和ハウス(IAU型免震装置)に近いシステムを開発し、昨年後半からTV広告などを展開しはじめてきている。


市場規模

 住宅の免震工法の建築実績は、10年前くらいでは年に数棟〜十数棟くらいで、殆ど実験的なものだけであったが、95年の阪神大震災以降は、年間100棟程度が建てられるようになり、2000年には200棟を超える住宅で免震装置が設置されるようになっている。但し、このうちの9割以上が一条工務店で施工されており、他には住宅メーカーが試験的に建てている状況となっていたが、昨年には500棟/年の建築数まで増えてきた(やはり450棟までは一条工務店)。
 今後については、住宅メーカーを中心に、かなり普及活動が進むと思われ、今年は700〜800棟かひょっとすると1000棟の大台を越える可能性も出てきた。この数は戸建て住宅(35万戸/年)に対しては、まだまだ少ない数量(0.3%)であるが、これが3000棟を超えるようになると(1.0%以上)1棟あたりの費用(現状で約300万円程度)が大きいだけに無視できない市場規模(100億円)となってくる。更に、量産効果によって免震装置の価格が下がって半分くらいの費用になってくれば、5年後程度には、地震大国である日本の住宅ニーズから考えて4〜5%のシェア(1〜2万棟以上)も見えてくる可能性もあり、他の耐震工法市場規模(木造接合金物工法で3万棟、2×4工法が7万棟)の一角を崩しかねない。

 ※免震住宅の建設実績(予測) 棟/年


市場エリア

 確認申請による追跡調査がないのではっきりしたことは言えないが、現在までの実績から一条工務店の本拠地である東海地方(及び南海地方)でのシェアが圧倒的に多く全体の70〜80%を占めているようだ。但し、阪神大震災や宮城地震などでの地震の影響から阪神、東北での事例も増えてきており、今後は全国に広がっていくことも考えられる。


免震住宅の供給形態

 現在のところ、免震装置を取り扱っているのは、主に住宅メーカーであり、一条工務店は例外として積水ハウス、大和ハウス、三井ホーム、積水ハイムなどが若干先行しており、これを追って旭化成(へーベルハウス)、トヨタホーム、ナショナル住宅などが正式な販売を始める動きを見せている。いずれにしろ、これらの住宅メーカーでは、開発や施工が自社によるもの(免震装置自体の開発は装置メーカーとの共同開発か、OEMでの提供となっている)であるから、供給する住宅商品(構造や仕様)が確定しており、同じスペックでの施工が出来るわけで、確認申請や必要な構造計算は一律に対応することが可能である。更に、実績を増やすために国土交通省の一般大臣認定(型式適合認定)を受けてきており、手続きの簡略化は進んでいる。
 一方、散在の地域工務店においては、一社での開発能力と設備投資には限界もあり、もし、免震工法を導入しようと思えば、免震装置を作っているメーカーに頼んで指導を受けながら取り入れていかなければ何も出来ない。しかも、確認申請手続きに関しては、最初は全て個別認定を受ける方法になってしまうので、専門知識のない工務店では対応出来ず、これも専門の構造事務所に依頼して審査を受けていくようになる。ちなみに、免震工法の建築確認申請書には、免震構造設計図書が求められるが、免震構造には告示2009号及び2010号から3つの方法より選択することが出来るようになった。

 1.四号免震

2階建て以下の木造住宅などの免震構造で告示2010号に適合する免震装置を設けていれば、構造計算書などの提出が省略できる。

 2.告示免震

限界耐力法による構造計算で、プログラム化された比較的簡略な計算で可能。

 3.精算法

時刻暦応答法解析という超高層の設計方法によって免震構造設計を行い大臣認定を受ける。

 しかし、四号面震にしても、37条認定(特殊な建築材料の認定)を取得した装置で、個別の住宅評定(個別認定と呼ばれ指定性能評価機関などによる審査)受けたうえで承認されるため、最低限、設計費用や申請費用(60万)などで300万円程度の費用を要する他、審査に3ヶ月程度かかるケースも多いようだ。このため、数をこなす場合などは、審査の簡略化を図るために一般認定(型式適合認定)を受けておく必要が生じてくるが、一般認定(型式適合認定)はあくまでも住宅の建物そのものとしての基準法に対する評価となるため、免震装置だけではなく、建物の構造形式や仕様、プラン範囲(大きさや階数、設計条件から場合によっては仕上げなど)までの制約が生じてくる。つまり、ひとつの住宅会社だけなら問題がないが、仕様形態の違う商品を扱う複数の住宅会社(工務店)などが共同で利用するような場合には、一定条件の仕様範囲や設計条件を合わせた形(型式の範囲)で使うことが求められる。ちなみに、一般認定を受けるには、(財)日本建築センターで専門の構造委員会(十数人の専門の大学教授などから編成されている構造審査委員会)に審査を依頼して、(内容にもよるが)約半年〜1年の期間が必要と思われ、それに資料作成や構造実験などの費用も含んで1000〜2000万円くらいの経費はかかると考えてかからなければならない(実大建物費用は含まない)。
 こうした事から、工務店などによる免震工法の採用には、単独での開発導入は難しく、少なくとも、専門の構造設計事務所か免震装置メーカーなどからバックアップを受けて実施していく方法を取るか、既に実績がある免震システムを有しているメーカー(専門設計会社など)のものを、そのままの形で利用するしかないようだ。この場合、幾つかの有力なシステムが既に販売され、大手住宅メーカーなどに採用されており、これらのものと同じタイプを利用していくことが簡単な方法ではある。しかし、同じ免震システムが何社にも採用されて差別化が出来なくなる恐れもあり、このあたりに供給サイドとしてのモチベーションやこだわりが関わってきて、いろいろなシステムでの対応を要求していく可能性も出てくるのではないかと思われる。


主な免震システムと採用会社など

名 称
IAU型免震システム
(単球式転がり免震)
シンドCUT
(ボールベアリング式)
マルチラバーベアリング
(積層ゴム免震)
その他
メーカー
(開発元)
関連企業
鰍h・A・U
(旧晦URI建築都市研究所)
叶_戸製鋼所・川口金属工業
且ュ島
甘クノウェーブ
SIRC
 日本免震研究センター
ブリジストン CLB免震住宅
(住友建設)
免制震デバイスオイレス工業
採用会社 大和ハウス
積水化学(ハイム)
スウェーデンハウス
松下電工
(テクノストラクチャー)
(ミサワホーム)
(パナホーム)
(旭化成)
積水ハウス
三井ホーム
三菱地所ホーム
エス・バイ・エル
一条工務店
免震のしくみ
(装置構成)
転がり免震支承
(単球方式)
油圧ダンパー
風揺れ固定装置
転がり支承
(ボールベアリング方式)
油圧ダンパー
積層ゴム支承
弾性すべり支承
(スライダー)
※耐久性60年
実 績 50棟 20棟 1,000棟
価 格 260万(40坪)
積水化学
317万(45坪)
三井ホーム
モニターキャンペーン(半額)
273万円(13.6万/坪)
性 能 820ガル→100ガル
(積水化学)
揺れ1/5〜1/8
1590ガル→140ガル
(積水ハウス)
揺れ1/10
800ガル→200ガル
揺れ1/3〜1/4
認 定 一般認定第2号
(大和ハウス)
一般認定
(積水・三井)
一般認定第1号
(一条工務店)
その他 軟弱地盤はダメ
地下室はダメ
フレキシブル配管
同左
(第1種地盤、第2種地盤のみ)
第3種地盤
(条件付き可能)
3階建て可能

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